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▼親がわが子を安心して預けられる学校に 石丸三郎先生著 編集K&KMORI
・理性のブレーキ
 
 人間が人間として生きていくために一番大切な「理性のブレーキ」を人は成長の過程で学ばなければならない。それを教え込むのが家庭と学校の基本的な役割です。このためには、教師も親も人権感覚を研ぎすまし、日頃から子供達の人間関係に目を配って、日常生活の中で「言ってはならぬことは言ってはならぬ。してはならぬことはしてはならぬ」としつけることなのです。しかし各地でいじめにあう子供たちからは、“先生が真剣に対応してくれない”との声がしばしば聞かれます。このことに関しては後日ではあるが私も実感したことがありました。余談になりますが、私は町の教育長時代の15年間、歩いて出勤し、帰りは回り道を歩いて中学校の裏を通りました。朝は子供たちの登校の集団の後を歩きました。その結果、毎年3~4件のいじめを発見し、学校に通報するだけでなく、時には学校に乗り込みました。次に「教師が真剣に対応してくれない」事例のひとつを記します。

・余談

 ある朝のことです。登校する子供たちと一緒に歩く、私の耳に「母子の争う声」が入りました。ふり返ると母親が中1の息子の手を引きずっています。
 近づかれるのを待って声をかけました。「何事かあったのですか?」
 母親は私の顔を見て大粒の涙を流して言われました。「いじめです。ひと月ほど前からです。担任の先生に相談に行きました。思わしくないので、家庭訪問の時再度頼み込みましたがこんな風です。今朝は隣家との間に座り込んでいましたのを引きずり出して学校に連れて行ってるところです」と跡切れ跡切れに訴えられました。
 「そうですか。ご心痛をかけてごめんなさい。一緒に中学校に行きましょう」校長室で校長・教頭に事情を話しました。校長はすぐ担任を呼んで指導の実際を尋ねました。担任は言いました。「1回は指導したとですよ。あいどん。この子がおとなし過ぎるからです。いじめられるのは」私は唖然としました。
 校長も教頭も黙っていますので私は言いました。
 「あなたは今、聞き捨てならぬことを言った。いじめが1回注意したぐらいでおさまると思っているのか。また、おとなしい子はいじめられてもしょうがないというのか」「おとなしい子でも、体の弱い子でも、勉強の遅れた子でも、まともに人間として扱われるよい学級をつくる責任が担任にはあるのを忘れている」「良い学級をつくるには、担任が常に生徒間の人間関係に心を配り、強い子、おとなしい子を引き上げて支えてやることだ」
 こんな担任ではどうにもならないので、校長の梃入れを頼み、教頭に直接の支援を頼む。毎朝、教室に出向き「A君、来ているね。みんなA君を頼むぞ」と声をかけてくれと。
A君は下校をするとき、教頭先生をたずねて一日のようすを報告しなさい。
 十日ほどたって教頭さんが報告にこられました。いじめを学級の問題として担任まかせにするのではなく、全校の問題として、全職員がA君を見守るようにした。
 教頭の私も、毎朝、様子を見に行って、声をかけている。A君が明るくなって登校も早くなってきた。とのこと。
 
・先生方へ いじめに対する積極的な姿勢を

校長には「良い学校」を、学年担任には「良い学級」をつくる直接の責任があります。そこでお願いです。

1 早期発見 高いアンテナ(高感度)を張って、生徒の中に入り込んで情報キャッチに努めることです。先生が知る努力をしなければ「いじめ」が簡単にわかるわけがありません。いじめが行われるのは昼休みと放課後が最も多いのです。
2 小さな暴力を見逃さないこと。これを見逃していたら次第にエスカレートしていきます。非行と暴力に対しては、はっきりとけじめをつけることです。“してはならぬことはしてはならぬ”と厳しく指導をしてください。暴力が横行する学級にしてはならぬのです。
3 生徒たちがグループをつくること自体はいいけれど、そのグループが他を排斥する行動をとる時は気をつけることです。
4 生徒たちの普段の生活をよく観察して
  ・弱い子を支援し味方になり、強い子をたしなめること
  ・かくれた子を引き出し、出過すぎる子をおさえること。
5 いじめを支える学級風にメスをいれること
  先生は学級でただ一人の大人です。深刻ないじめを解決するのは子供の力では無理です。教師が腹をすえて敢然と働きかけねば。
6 「教育は人なり」といわれているように学校教育における教師の果たす役割は大きいです。どんな立派な施設、設備が整っていても、どのように優れた教育計画が作成されていても、子どもとの直接的な接点を持ち、日々教育活動を行っている教職員がいなければ子どもは良くなりません。

 子どもの学校生活の大半は教科書の時間であり、その指導にあたる教師の人間性、専門性などが子どもに強い影響を与えるからです。
*記述はさかのぼります。
 前述の職員組合で発言した若手教師に、終了後出かけていって、私はお礼を言いました。顔をほころばせた彼のことばです。
 「校長先生の“教育の広場17号”には感銘したものですから・・・・・・・」
by yskkyhh3 | 2004-11-15 16:25
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