最高の能楽であった。
それは、精巧に計算され尽くされていた。
能楽師、鵜澤久先生とその娘さんを中心に、能公演は大成功である。
川崎市とウーロンゴン市の姉妹都市提携20周年記念事業にふさわしい。
5月13日の式典のなかで、川崎市長からウーロンゴンのジェネラルマネージャーへ
能楽舞台一式と扇子が贈られた。
川崎市とウーロンゴン市の企画は粋である。センスがいい。
能舞台には静謐(せいひつ)がある。
喧噪の中に生きる私どもへの最高の贈り物だ。
舞台のはじめに
鵜沢先生の娘さんが今回の演目「羽衣」のあらすじをわかりやすく説明。
観客は能の世界に緩やかに入ることができる。
おかげでわたしもゆるりとさせていただき、心地よい眠りに身をまかせた。
なんとも贅沢なひととき。
謡(うたい)や囃子方の奏でる音は心地よく、心鎮まる。
日本の文化、それは「鎮め」が根底にある。
今風にいえば、ヒーリングがベース。
しかし、それだけでは終わらないのがこれまた日本伝統芸能の奥の深さ。
観客のアンコールに応じて、娘さんの鵜沢光さんの迫力ある演舞が披露されたのだ。
観衆の目はその舞台に釘付け状態になり、
謡、笛、小鼓、大鼓、太鼓の速いピッチに高揚。
最後には止まない大きな拍手と声援が贈られた。
日本の伝統文化の真骨頂は「鎮め」と「煽り」にある。
このことを観客は感じとられたことだろう。
計算され尽くされていたウーロンゴンの能舞台。
ウーロンゴンの夜。
ありがとうございました。
追記:事務所に帰ってみんなから「どうだった?」と聞かれたので
わたしは素直に「とてもよかった。途中眠れました。」と答えました。